2014年2月8日土曜日

読書『ITビジネスの原理』尾原和啓著


尾原和啓さん(@kazobara)の『ITビジネスの原理』を読了。
そもそもこの本を手に取るキッカケになったのは、フェイスブックフェードで流れてきた孫泰蔵さんのレコメンドポストでした。

すぐに「読みたい!」と思いました。
題名や装幀、孫さんの書評からしてなかなかヘヴィーな内容なのかと思いきや、わりとライトでした。とはいえ要点がそれぞれノードのように論理的に構成されているので、昨今のITビジネス事情を整理するには持ってこい。
とはいえ、やはりネットの変遷をガバっと把握するには梅田望夫さんの『ウェブ進化論』はやはり一読必読かと。
ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
梅田 望夫

筑摩書房
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やっぱりというか、なんというか。
売れ行きは好調なようです。
インフルエンサーを巻き込んでいって、積極的にソーシャルで拡散してもらえると好循環が回りますね。


いちおう本の内容に少しだけざっくり触れておきます。
そもそもインターネットビジネスとは
世界中に散在しているユーザを一箇所に集めて、そのユーザを金を出しても欲しいと思っている企業や人と結びつける、マッチングするもの。
その重要な2つの仕組みが
  1. ユーザのインテンションを先鋭化させて正しく把握する
  2. そしてそのインテンションに基づいて最適なものを提示する 
すること。



それを確認したうえで、上記の図にある「純粋想起」に該当する企業・サービスはITビジネスにおいて圧倒的な強さを発揮する。
純粋想起:何のヒントや手がかりもなく、ブランド名などを思い浮かべること。



あとは、なぜソーシャルゲームがこれほどまでの興隆に至ったかの要因としての「サンクコスト sunk cost」

尾原さんが列挙しているインターネット独特の特徴をもう一つだけピックアップしておくと「レイヤーバンドル、バリューバンドル layer/value bundle」
これの一番分かりやすい例が「初音ミク」で、ある人がイラスト描いたり、またある人がサウンド作って、またある人が歌詞をのっけたりと、それぞれが自分の技能を活かして、一つの作品を仕上げていく。みんなでマッシュアップしていく。
「Everyone Creator(みんなクリエイター)」というGoogle ChromeのCMが一番わかりやすくそれを表現していますよね。




あと尾原さんは個人的な企画を進行させていて、それも面白い。
それぞれ自身の知り合いを呼んで10分間対談するというシンプルなものなのですが、登場するゲストが豪華。こういったインタラクティブな「創発性」をすごく大事にされているのが今著の内容からも伝わってきます。そもそもこの本が書かれることとなった経緯として、そういった背景があったそうです。
↓たとえばこれはチームラボの猪子さんとの対談。


ITビジネスの原理ITビジネスの原理
尾原 和啓

NHK出版
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2014年2月7日金曜日

あの頃の自分に生かされてる


ここのところ、おかげさまで、毎日、何かに追われている忙しない日々を送らせていただいています。

記事原稿の入稿に追われていたり、一分でも早い翻訳文の返答、通訳の仕事のダブルブッキング、生徒のテスト期間、時間の渦のド真ん中で漂流している感覚。

考えてみれば、いま従事している多くの仕事のうち、英語の占めるウェイトが半分を超えていると思うのです。
たとえばこの前もブログで書いた「2014 国際宝飾展(IJT)での通訳のお仕事を終えて」など通訳のお仕事。
あるテレビ番組の製作スタッフとして翻訳、PR会社でも海外クライアントとのやりとりは英語ですし、たとえばGQ記事の執筆にしても英語で情報収集することが多い。
家庭教師として英語を教えているのはその最たる例です。

ほんとうに人生とは不思議なものです。
そのときの自分の何の気無しの気持ち・判断・心の移ろいが5年後、10年後の自分のやっていること、立っている場所を決めるのです。

英語が苦手すぎて、高校に行かずに就職するか、偏差値最低底の商業高校に行こうとぼんやり考えていたのに、
結局はある恩師との出会いをキッカケに英語科の高校に入り、すぐに留学、春からは大学院に行くという。そして今やっている仕事のほとんどは英語にまつわるもの。

あのとき、「doなのかdoesなのか」も分からず、「三人称単数」が中3の夏でも分かっていなかったのに、とりあえず腹をくくって全精力を注ぎ込んで一から取り組んでみたからこそ今の自分がいる。

「あー、あのとき、ひとつひとつ机で単語を覚えた自分がいるから、今の自分がここにいるんだなあ」とビッグサイトで通訳をしているときにふと思ったのでした。

イマの自分は、未来の自分から見た「アノ頃の自分」
イマの苦しみや努力は、アノ頃の自分から未来の自分への時間をこえた"プレゼント"

2014年2月6日木曜日

読書『統計学が最強の学問である』西内啓著


「ビッグデータ」という言葉をメディアで目にしない日がない。
どうも礼賛の向きが強くて、内実が見えてこないというか、虚実が字面の上だけで踊り狂っている印象が強かったのですが、この本でもその点について紙面が割かれています。


そもそもビジネスにおいてデータを使うならば、次の3つの問が明確になっている必要がある。すなわち、

①何かの要因が変化すれば利益は向上するのか?
②そうした変化を起こすような行動は実際に可能なのか?
③変化を起こす行動が可能だとしてそのコストは利益を上回るのか?

⇒以上3つが明らかになった時点で、統計解析の便益の見通しがはじめて立つというものであって、これらをなくしてデータをこねくり回しても何も出てこない。
(逆にいうと、最適な手法で、的確に用いられれば、強力な武器になるということです。以前こんな記事を書きました⇒「ビッグデータ解析と競馬」)



もちろん、「回帰分析」「カイ二乗検定」「p値」などじっさいに統計解析を行うにあたっての基本的な用語説明、方法なども記述がありますが、そういった実践的知識についてはほか多数の市販の統計学入門のテキストに譲り、(たとえば『完全独習 統計学入門』)この本では統計学という裾野の広がった学問を鳥瞰的に把握することを目的にすべきであると感じました。
完全独習 統計学入門完全独習 統計学入門
小島 寛之

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一口に「統計学」と言っても、


①実態把握を行う社会調査法
②原因究明のための疫学・生物統計学
③抽象的なものを測定する心理統計学
④機会分類のためのデータマイニング
⑤自然言語処理のためのテキストマイニング
⑥演繹に関心をよせる計量経済学

など多数の分野にまたがり、交差してしまっているのが現状だということです。

「演繹」の計量経済学と「帰納」の統計学>や<ベイズ派と頻度論派の確率をめぐる対立>など章の見出しをみると、読者にそうした分野間の乱れに起因する混乱をきたさないようにする筆者の配慮がうかがえます。

統計学が最強の学問である統計学が最強の学問である
西内 啓

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