2011年11月5日土曜日

読書『はじめての政治哲学―「正しさ」をめぐる23の問い』小川仁志著

itqou/ クラムボン



ゼミでも「政治哲学」を扱うことがしょっちゅうあるので、おさらいというか初心にかえる意味合いを込めて新書で入門書を読みました。
平易な言葉で政治哲学の重要な研究者の理説が網羅されているし、実際の事例と絡めながら説明してくれるのですごくわかりやすいです。

グローバリゼーションが進行して「主権」の所在が曖昧で不明瞭になってきているというのはよく耳にする指摘ですが、そのことに関するデヴィッド・ヘルドの説明が最もしっくりくると感じています。
主権は無限で不可分の排他的な公的権力の形態として個別の国家に具現されているわけではなく、多数の連携型の権力中枢と重複型の権威領域からなるシステムに埋め込まれているといいます。
もはや一国が国民国家の内に「主権」を有していると言うよりも、複層的な多領域のコンプレックスな絡まり合いの中に流動的に埋めこまれている(embedded)されているということです。


それから、パレスチナ出身の比較文学者エドワード・サイード がテロリズムに対抗する唯一の方法を指し示し、アメリカのアフガニスタン侵略を非難した言葉も印象に残っています。
忍耐と啓蒙こそが報復の連鎖を断ち切り、互いの陣営に真の自由をもたらす唯一の理想の道である。
報復は報復を生み出し、その無限ループの中で殲滅が繰り返され、無残にも罪なき人の血が流されていくのです。
「寛容」の心からしか解決は導けないと。

コスモポリタン思想の潮流をくむポッゲの「果たしうる義務」という概念を理解しておくことも、これからの時代には不可欠であると思います。
グローバルな資源の配当という名の基金のことです。資源の生産の1パーセントを途上国のサービスに役立てることで、地球上のすべての人に基本的なインフラを供給できる。
国際政治がゼロサムゲーム的思考から脱却し、いや脱却する必要さえないのかもしれません。少しの、ほんの少しの「共有精神」「救済精神」で、平和はわたしたちが思うよりももっと簡単に実現しうるものであるのかもしれません。
大学生ブログ選手権

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