2012年1月2日月曜日

ぼくらは言葉を食べて生きている

たしかなこと/ 小田和正


「人間とはつくづく言葉を食べて生きている動物なんだな」
坂本龍一先生が東日本大震災の後、インタビューの中でこう答えていました。
独りでは不安で、誰かの語りかける声に耳を寄せて、共感を覚えて、新しいことを知って、少しずつ年を取っていく。

ここ最近、読んだ本をいくつか紹介します。

①『石ころをダイヤに変える「キュレーション」の力』by 勝見明

ここのところ「個人のメディア化」が顕著になってきて、メディア構造の変化にずっと着目していました。夏ごろだったかに佐々木俊尚さんの『キュレーションの時代』を読んでから、キュレーションの有意義性と新時代の情報流通形態への中核になるのではないかと思ってました。この本の中でも数々の事例と共に、知のエコシステムの中でキュレーションを通して新たな価値が生まれる様が描かれています。
【キュレーションのプロセス】
(1)既存の意味の問い直し(再定義のプロセス)
(2)要素の選択・絞り込み・結びつけ(新しい編集のプロセス)
(3)新しい意味・文脈・価値の生成(創発のプロセス)


②『自分のアタマで考えよう』by ちきりん、良知高行


アルファブロガーとして有名なちきりんさん(@InsideCHIKIRIN)の著作。
知識に頼らず、あくまで自分の頭だけで事象を分析し、考えだすためのメソッドを紹介。
「知識をそのままの形で頭の中に保存するのではなく、必ず「思考の棚」をつくり、その中に格納するということです。単純に「知識を保存する」=「記憶する」のではなく、知識を洞察につなげることのできるしくみとして「思考の棚」をつくる- これこそが「考える」ということなのです」
頭の中にこうした「思考の棚」を数多く持っていれば持っているほど、急な事態にも自分自身の考えを持ってして臨めると。

③『あの企業の入社試験に、あのひとが答えたなら。』


社員さんに勧められたので読みました。むしろその方が制作に関わったとのことだったので、興味津々に。
TBSや集英社、博報堂などメディア・エンターテイメント業界の実際の入社試験に有名人の人たちが挑戦、その解答を探ってみようという趣旨。宇宙飛行士の野口聡一さんや、百歩報道の箭内道彦さん、他にも数々の有名な方々が答案しています。

④『使ってもらえる広告 「見てもらえない時代」の効くコミュニケーション』by 須田和博


インターンの時もお世話になった須田さんの書いた本。
「モノが売れない時代なんだから、"モノを動かす仕組み(サービス)”そのものを広告的な発想で開発すればいいんじゃない」
ハッとしますよね。広告の窮乏ばかりが喧伝されてますが、須田さんのような視点を会社として共有して、みんながその姿勢で向かっていけば、現代こそ広告会社の存在意義があるのではないかと。カオスの中で、一筋の光を差し出せるような存在としての広告代理店へ。

⑤『藤田晋の成長論』 by 藤田晋


藤田社長が青学の先輩ということで、普通の人以上に動向や発言が気になってしまいます。
本書自体はビジネス書の王道と言った内容。

・「憂鬱な仕事」が大きな成長を促す
・常に「広報部員」の視点で考える
・「整理」より、「捨てて、絞る」
・ネガティブに考え、ポジティブに生む
・"誘いの言葉"を社交辞令で使わない
・頼まれた仕事は「上司の仕事」と捉える
・大きな仕事には、社内人脈が不可欠
・会社を辞める時、「人間力」が問われる



など、50の項目にわけて、一つ2ページずつ解説されています。


⑥『博報堂スタイル』by 高橋宣行


広告屋一筋だけあったという高橋さんの語り口はとても優しくてソフトで人柄がにじみ出ています。
最高の広告人とは、もっとも謙虚な人だ。
謙虚に「もっと、もっと」と考えられる人は、永遠に発展途上人だ」 
「博報堂には、商品も工場もない。あるのは情報と知恵と技術。」
タイトルにも書かれているように、博報堂のカラーがありありと伝わってきます。

⑦『イソップ寓話の世界』by 中務哲郎


イソップ寓話それ自体を深く読んでみたかったのですが、今著はイソップ寓話の起源、成り立ち、はたまたイソップという人物像に迫った本。
実に興味深かったです、筆者の中務さんの博覧強記ぶり、中務さんが所蔵するであろう浩瀚な蔵書がうかがい知れました。寓話作家としてのイソップ誕生秘話(諸説あるでしょうが)が面白かったので、紹介。
人々が才能の分前をヘルメス神に祈った時のこと、イソップの捧げ物は極めて貧しく、ヘルメスは豊かな捧げ物をした者から順に哲学、弁論術、天文学、音楽、叙事詩、イアンボス詩、等の能力を授けて行ったが、疲れてイソップのことは忘れてしまった。そこでヘルメスは、生まれて初めて揺籃の中で使った寓話の術がまだ残っていたのを幸い、それをイソップに与えた、と。(ピロストラトス『テュアナのアポロニオス伝』)
⑧『カント入門』by 石川文康


入門書ですが、ある程度の哲学の基礎知識がないと難しく感じると思います。
カントが世に遺した言葉はどれも示唆的ですが、僕がとりわけ好きなのは定言命法の根本方式です。
「汝の意志の格律がつねに同時に普遍的立法の原理となるように行為せよ」
⑨『100万馬券の履歴書』


こうゆう本は根っから信じていませんが、話としてはどれも面白いです。
当日の1~5Rに出た枠番によって、強い枠筋を読む。そして、もっとも多く出現していた枠筋(強い枠筋)を、6R以降に狙っていく。
「1、4、7枠」、「2、5、8枠」、「3、6枠」という3パターンがあり、年間全レースの60%強が、このいずれかに該当する。
など、それっぽいことがふんだんに書いてあります。競馬は基本的にたーくさんある要素のどれを切り取るかで予想の方法が個人個人で変わってくる。それが醍醐味でもあるのですが。

⑩『車輪の下』by ヘルマン・ヘッセ


僕は根っからの文学少年なので、本当は一日中こういった本を読みながら過ごしていたいのですが、こうやって見返してみるとなんだか「広告」の本とか読んじゃってますね。笑
ドイツ文学不朽の名作とされている今作。
神童としてエリート街道を突き進んでいくハンスでしたが、彼も「内面のあらし」を抑えきれずに堕落していきます。急降下の彼の半生が、美しいドイツの片田舎の描写と共に筆者の憧憬として描かれます。心に止まったセリフ
「生は死よりも強く、信仰は疑いより強いから」
なんだか収拾もつかなくなってきたので、このへんにしておきます。
それで次からは5冊ずつくらいの紹介にしますかね。
大学生ブログ選手権

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