映画会社に勤める友人の勧めでiTunesでレンタル鑑賞。
「上申書殺人事件」という実話に基づいた社会派サスペンス映画。
日本アカデミー賞最優秀作品賞ノミネートなど、かなり評価が高かった模様。
記者を演じた山田孝之、殺人を次々と犯した死刑囚を演じるピエール瀧、彼を裏で操っていた首謀者"先生"を演じたリリー・フランキー。
キャストが絶妙で、とくにリリー・フランキーのある意味いつもどおりのゆるく軽い感じが「凶悪」に拍車をかける。
「君と僕は足りないものを補い合う車輪のようなものなんだよ」と先生こと木村がやくざ幹部須藤に教唆し、「死体を金に変える」錬金術のごとく偽装保険金殺人を繰り返していく。
それと平行して徹底した証拠隠滅、関係者の口封じも怠らない狡猾さを見せる。
汚れ仕事を散々こなした須藤は結局、逮捕され、死刑判決が下る。
獄中で、自分が木村の掌に乗せられていたことを悟り、憤怒の念が次第に増していく。
とくに許せなかったのは唯一信頼していた舎弟の五十嵐を自らの手で銃殺してしまったことだった。
そこで闇に葬られようとしていた、木村と共謀した余罪を明潮社(実際には新潮社)の記者である藤井(モデルは宮本太一)にリークする。
藤井は会社の意向を無視し、単独で取材を重ね、裏づけを得ていく。
上告中だった須藤は自分の判決に不利をもたらすであろう余罪を吐いてまで、木村を制裁したかった。
劇中の後半では、キリスト教に入信し、習字や短歌などに生きがいを見出していく須藤が描かれる。
記者・藤井が事件にのめり込んでいく中で、池脇千鶴演じる妻の洋子は認知症の義母の介護にまいっていき、徐々に義母に暴力を加えることに罪悪感を覚えなくなっていく。
宗教に帰依してから人が変わった須藤。
温厚な性格が歪んでいき、追い詰められていった洋子。
木村や須藤に相応の償いを追わせようと、徹底的に、ある意味狂気に駆られ奔走する藤井。
環境や運命に翻弄されることで、変わっていく人間の姿、内側から顔を出す「凶悪」。
どことなく浦沢直樹『MONSTER』で描かれる人びとと交差する。
【完全主観採点】★★★☆☆(3.5)
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