Each day is a little life: every waking and rising a little birth, every fresh morning a little youth, every going to rest and sleep a little death. - Arthur Schopenhauer

2015年8月16日日曜日

読書『フラニーとズーイ』J・D・サリンジャー著

フラニーとズーイ (新潮文庫)

村上訳で『フラニーとズーイ』を読む。
ヘンリー・ミラー『北回帰線』にしろ、ギラギラした筆致で(おそらくハイな状態で?)一気呵成に書かれた文章というのは、読む度に発見がある。
フラリーの章はどこかしっとりとした上品な展開で物語が進んでいくのだけれど、ズーいに移った途端、ある意味猥雑なように、そして抽象度を上げながら物語は進行。
宗教、そして信仰のくだりでは『カラマーゾフの兄弟』のミーチャを想起してしまいました。

2015年8月8日土曜日

読書『火花』又吉直樹著


話題の著を読む。(TSUTAYAスタバで...)
(なんだかんだミーハー精神というか、こういう類の数年に一度ある有名人が書いてバズった本は読んでいる気が...。水嶋ヒロ『KAGEROU』然り)
KAGEROUKAGEROU
齋藤 智裕

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えー、まず結論からいうと、断然(芥川賞をとっていることからも推察されるように)そりゃ『KAGEROU』よりは間違いなくクオリティは高いです。
それはもう語彙や筆致から数ページめくるだけで分かる。

先日放送されていた「情熱大陸」の芥川賞受賞までを密着した又吉さんの回でも強く感じたように、どこまでも内省的な性格が直球で主人公に投影(おそらく又吉さんご本人?)されていた気がします。
どちらかというと僕も思索的な人間なので、共感できる部分も。
評価が分かれているのは、誤解を恐れず単純にいえば、いわゆる暗い人には受けそうな本。
プロットの本筋とは関係ないかもですが、個人的に痛いほど分かって、思わずメモしてしまった言葉。
神谷さんの淀みなく流れるような喋りを聞いていると、自分が早く話せないことに苛立つ時があった。頭の中には膨大なイメージが渦巻いているのに、それを取り出そうとすると言葉は液体のように崩れ落ちて捉まえることが出来ない。
火花火花
又吉 直樹

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読書『馬主の一分』マイケル・タバート著


馬主に関する書が少ない中、貴重な馬主本人が記した本。
当然、騎手や調教師とのリアルなやりとりや、人間関係で泥臭く動いている競馬界の実情もわかる。近年では少なくなってきたとはいえ、いわゆる庭先取引のことなど、新規で馬主になる人の苦労がもろもろ記されていたので刺激的でした。
なにより驚くべきは筆者のタバートさんがサラリーマンだということ。
ちょっと調べたらデロイトトーマツでパートナーということで、合点がいきましたが。
個人的に上記のような内容が書かれた箇所はもちろん楽しめたのに加え、馬主の馬券術という章も興味深かった。
例えばWIN5は2〜3レースを1頭に固定し、残りレースを全頭流し。
これはある程度のまとまった資本があることが前提ですが、三連単 にも当てはまることで、単勝一点で勝負するよりも、一着固定で全頭流しのほうが妙味は多いのではないかというのがタバート氏の持論です。
統計的にみたら単勝の方が期待値は高いのでしょうが、レース毎に見極めれれば、そこの溝は埋まっていくのではないでしょうか。
また、今著でも触れられていた「UPRO事件」ですが、以下の記事が参考になります。(『UPRO』はなぜ160億円も勝てたのか?
この記事の結論としては、「倍率に応じて掛け金を変え、全ての組み合わせの馬券を購入」ということらしいです。
部分的には同意です。
ようはお財布事情を勘案して、馬券戦術は変えないといけないということですね。
馬主の一分 (競馬ベスト新書)馬主の一分 (競馬ベスト新書)
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2015年8月5日水曜日

読書『100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか』ジュリアン バジーニ著


思考実験とはいえど、『頭の体操』シリーズのような頭を柔らかくして、トリッキーな解を導き出すといった本ではなく、哲学や倫理など古来から考え続けられてきた”答え”のない問いを正面から考えてみようといった思想寄りの本です。
頭の体操 BEST頭の体操 BEST
多湖 輝

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そういう意味ではサンデルの『これからの「正義」の話をしよう』に近いですし、実際にかの有名な「トロッコ問題」なんかも取り上げられています。
これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
マイケル サンデル,鬼澤 忍

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「テセウスの船」「水槽の中の脳」「ギュゲスの指輪」はなど広く知られる思考実験を一つ一つ吟味していきます。
100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか
ジュリアン バジーニ,河井美咲,向井 和美

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2015年8月3日月曜日

読書『競走馬私論―プロの仕事とやる気について』藤沢和雄著


藤沢和雄調教師が著された本を読みました。
新しい本ではないので、藤沢先生がシンボリクリスエスやゼンノロブロイを送り出すより前の話が中心ですね。
その分、教師になろうとしていた大学時代から、イギリスへの4年間の調教修行、そして幾度も調教師試験を受験して、やっと開業するまでなど下積み時代の話が余すところなく書かれていて非常に興味深い。
馬主と調教師の関係性の機微が描かれていたのも非常に面白く読めました。
あとはやはりタイキブリザードやタイキシャトルの海外挑戦記が読んでいてゾクゾクしました。


競走馬私論―プロの仕事とやる気について (祥伝社黄金文庫)競走馬私論―プロの仕事とやる気について (祥伝社黄金文庫)
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2015年8月1日土曜日

読書『都市のドラマトゥルギー』吉見俊哉著


ぼくの指導教官の吉見俊哉先生の著書を拝読しました。
この本、実は先生の修士論文が下敷きになっているというから驚き。
本書は、近代的な都市化のなかでの盛り場の意味的な機制の変容を、都市に集合した人々の相互媒介的な身体性の側から捉え返すことを目指したもの。
とあるように、都市論をドラマトゥルギー=演技論の視覚から捉え返した論考。
〈演じる〉ことの根底にあるのは、間身体的な相互性を超越論的な審級との相互性に媒介していく、文字通りドラマティックな運動である。 
<浅草なるもの>から<銀座なるもの>へ、そして<新宿なるもの>から<渋谷なるもの>への 通時的な都市の変遷が理論的に論証されていくのが、個人的には方法論として、論の組み上げ方として非常に勉強になりました。
都市のドラマトゥルギー (河出文庫)都市のドラマトゥルギー (河出文庫)
吉見 俊哉

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2015年7月31日金曜日

読書『きみはポラリス』三浦しをん著


『舟を編む』以来だったか、三浦しをん先生の本を読む。
恋愛もののアンソロジー。
きっとど直球の恋愛ものは受け付けないのだけど、そこはさすが三浦先生。
広い読者に読ませる捻りのあるプロットは物語の書き手にとっては大いに勉強になるのではないか。
個人的には「森を歩く」が一番ツボでした。
彼氏の素性を特に気にとめることもなく1年以上も過ごして、ドラッグディーラーかと思いきや、実はプラント・ハンターだったりする。
悲しいわけでも、ハッピーエンディングでも、なんとなくふんわりとした終わり方が新しくて良かった。

きみはポラリス (新潮文庫)きみはポラリス (新潮文庫)
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