さくねんにも書いた「2013年に読んだ250冊から選ぶ10冊のブックレビュー」に引き続き、今年も読んだ本の中から10冊ほどのレビューを。
鎌倉の山奥の別荘のウッドデッキに吊られたハンモックにゆらゆら揺られながら、書いています。
フリーターだった昨年から読書量は80冊ほど減ってしまい、十分な読書時間が確保できませんでした。
主に移動中の電車内で読むことがほとんど。
ブログのエントリー数自体も劇的に減ってしまいました。
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1. 『動きすぎてはいけない―ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』千葉雅也著
この本で掲げられるテーゼは「接続過剰の世界から『切断の哲学』へ」。
現代思想の学術書としては(分厚さや値段なども勘案すると)ある意味快挙というか、83年に当時26歳だった浅田彰さんが書いた『構造と力』に通ずるところがありそう。
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というか、当の浅田さんも本著の帯に推薦文書かれているんですよね。
ドゥルーズ哲学の正しい解説?そんなことは退屈な優等生どもに任せておけ。ドゥルーズ哲学を変奏し、自らもそれに従って変身しつつ、「その場にいるままでも速くある」ための、これは素敵にワイルドな導きの書だ。==========================================================================
2. 『カラシニコフ』Ⅰ・Ⅱ 松本仁一著
異名“アフリカの帝王”・元朝日新聞記者で、90年代には中東アフリカ総局長としてアフリカ報道の第一線に立ち続けてきた松本仁一さんのルポタージュ。
こちらの本も読後に感想などをブログに書いているので、詳細はそちらをご覧いただくとして、全体の読後感がわかる自分の一節を引用。
戦争/紛争の・飢餓/貧困の渦の目にあった“カラシニコフ”に諸悪の根源の糸をみた筆者。前巻でアフリカへ、後巻で南アメリカ、中東へ。カラシニコフが氾濫する世界の紛争地帯へと踏み入り、カラシニコフを追い、その武器に翻弄される人々の人生に肉迫していく衝撃のルポタージュ。一見、複雑きわまりなく混沌とした国際政治の論理。カラシニコフという、旧ソ連の無骨で真面目、愛国者精神溢れる男が開発・設計した一丁の銃から前世紀は新たなる争いへと足を踏み入れていくことになる。松本さんの本で他にも断然オススメなエッセイとして『アフリカを食べる/アフリカで寝る』を挙げさせていただきたいです
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3. 『意志と表象としての世界』<1><2><3> ショーペンハウアー著
これに関しても読了後にブログにまとめているので、そちらを参照ください。
われわれが生きかつ存在しているこの世界は、その全本質のうえからみてどこまでも意志であり、そして同時に、どこまでも表象である。
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4. 『政治の起源―人類以前からフランス革命まで』上・下 フランシス・フクヤマ著
これもブログで取り上げて書いてますね。(こうみると前半はわりと備忘録をとっていたようです)
昨年のブックレビューでもビッグヒストリー系ということで、ジャレド・ダイアモンドを取り上げていますが、この本は人類学ではなく、あくまでも政治思想。
続編も刊行予定とのことなので、とりあえず待ちます。
近代の政治制度を構成する3つの要素―強力で有能な国家、「法の支配」への国家の服従、全市民に対する政府の説明責任―は18世紀末までに世界のいくつかの地域で確立された。中国は早くから強大な国家を発展させていたし、インド、中東、ヨーロッパでは法の支配が存在していた。そしてイギリスで説明責任を果たす政府がはじめて出現した。イエナの戦い以降の政治制度の発展においてはこうした制度が世界各地で模倣されたが、まったく新しい制度が追加されたわけではない。共産主義は20世紀に追加を実現しようとしたが、21世紀には世界の舞台からほとんど姿を消した。
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5. 『社会は情報化の夢を見る―ノイマンの夢・近代の欲望』佐藤俊樹著
この本自体を直裁的に取り上げたわけではなく、授業で一つのテクストとしてこの本を扱ったときに、そのときに振り返りを残しておく意味で「なぜわたしたちは夢を見続けるのか?―「技術決定論」の解体作業」というブログを書いたので、そちらに詳細は譲るとして、この本を読むことで「情報」という言葉に自己反省させられたというか、無自覚に技術決定論に絡め取られていないかを内省するいい機会になりました。
情報化社会論はいわばその実質を失うことで、つまり空虚な記号になることによって生き残ってきたのである。
そう、それはまるでファウストと悪魔との契約を思わせる。情報化社会論は永遠の若さと引き換えにその魂を売り渡した。情報化社会論が50年間死ななかったのは、それがすでに死んでいたからにほかならない。「生きている死体 living dead」ー情報化社会論がどこかホラー映画の悪夢を思わせるのも無理はない。
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6. 『もっとも美しい数学 ゲーム理論』トム・ジーグフリード著
ゲーム理論については大学時代から関心を寄せ続けてきたので、この本は超絶おもしろかったです。
ブログでもけっこう思いの丈を綴っているので、そちらをご笑覧ください。
ゲーム理論は、あらゆる科学(経済学、心理学、進化生物学、人類学、神経科学など)を統合する共通の数学言語を提供しており、これらの科学をパズルの駒のように組み合わせれば、命や精神や文化といった、集団としての人間行動の総体を明らかにする科学ができあがる。ゲーム理論の数学を物理科学の数学に翻訳できるという事実からも、ゲーム理論こそが、生命や暮らしと物理学とを統合する科学、つまり真の「万物の理論」をひもとくための鍵だといえよう。
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7. 『百年の孤独』ガルシア=マルケス著
ノーベル文学賞受賞者の言わずと知れたコロンビアの作家ガルシア=マルケスの代表作。
マジックリアリズムの嚆矢にもなったとされる本作。
読めばよむほど、ジョジョの通奏低音というか、ジョースター家の血の物語を想起せずにはいられなかった。
ブエンディア家の者の心は、彼女にはお見通しだった。百年におよぶトランプ占いと人生経験のおかげで、この一家の歴史は止めようのない歯車であること、また、軸が容赦なく徐々に磨滅していくことがなければ、永遠に回転しつづける車輪であることを知っていた。
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8. 『海賊とよばれた男』上・下 百田尚樹著
これはR社でインターンをしているときにお話をさせていただいた社員さんにオススメのビジネス書を尋ねたときに、薦められた作品。
もちろん百田尚樹作品は『永遠の0』をはじめ、目を通してきているし、この本も積読していた。
上下と読み終えた末に、なぜこの本を“ビジネス書”と言ったのか、その意味がわかった。
戦後直後、まさしく“グラウンドゼロ”の状態から人徳で邁進していく国岡鐵造から学ぶことが多々あった。
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9. 『ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール、ブレイク・マスターズ著
今年読んだビジネス書の中ではダントツで良かったです。
未読の方はNEWSPICKSの「伝説の起業家・投資家 ピーター・ティール」という連載をまずは読んでみることをオススメします。
単なるシリコンバレー最前線の流儀(もちろんリーンスタートアップの要諦なども話はありますが)のみならず、「競争は資本主義の対極にある」という言葉にもみられるように、政治/経済制度のあるべき姿にまで踏み込んだ深度のある著作となっています。
リクルートのMTL(メディアテクノロジーラボ)所長の石山さんが、共著者のブレイク・マスターズにツイッターで直接連絡を取り、『ZERO to ONE』を翻案してリーン・キャンバスに落とし込んだものが公式に採用されたそう。(下図がそれ)
リクルートのMTL(メディアテクノロジーラボ)所長の石山さんが、共著者のブレイク・マスターズにツイッターで直接連絡を取り、『ZERO to ONE』を翻案してリーン・キャンバスに落とし込んだものが公式に採用されたそう。(下図がそれ)
(東洋経済オンライン「シリコンバレーも驚く!リクルートの異端児」より。インタビュー記事も非常に面白いです)
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10. 『21世紀の資本』トマ・ピケティ著
おそらく今、世界で一番有名な学者の一人であろうフランスの経済学者トマ・ピケティの著作。
昨年、仏語から英語に翻訳されるなりAmazonで一位に踊りでたとのこと。
もともと僕も英語版をKindleで読んでいたのですが、あまりの分量に読み終えることができず、途中で中断していました。
その折、今月末に東大でピケティが講義することが決まり、(「トマ・ピケティ 東大講義『21世紀の資本』」)なんと僕の研究室が講義のお手伝いをすることになりました。
せっかくなので、高価ではありましたが邦語版も購入したのでした。
というわけで、まだ読み終えてないので、終わりましたら追記します。
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というわけで、今年は去年に比べるとあまり読書はできずじまい。
おそらく今年も修論のための読書が中心で、自由に読める本も限られてくると思うので、より一層選ぶ本の精査が重要になってきそう。
また2015年末にどうようのブックレビュー書きます!
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