Each day is a little life: every waking and rising a little birth, every fresh morning a little youth, every going to rest and sleep a little death. - Arthur Schopenhauer

2015年7月28日火曜日

読書『群像の時代 動きはじめたメディアコンテンツ』志村一隆著


明日のメディア』などでも知られる志村一隆さんの新著を読みました。
先日、下北沢B&Bで行われた今著の記念出版イベントに取材で行き、店頭で買いました。

マスメディアからソーシャルへというよく言われる大局的なメディア論のシフトは抑えながら、アドテク、人工知能、ゲーミフィケーションなどなど周辺領域などの各論をも網羅しつつ、次のメディアの行く末を占った本。
高城剛さんじゃないですが、志村さんも数年の間に多くの国を旅し、そこで得られた最新の海外メディア事情の知見もふんだんに詰め込まれている。
この本の要約的ハイライトとしては以下のような節でしょうか。

コンテンツビジネスの要諦は、著作権とコピー技術の独占だった。スマホなどのデジタル・テクノロジーが、その独占を民主化する。(10頁)
コンテンツとしての高価な映像とコミュニケーションのツールとして使われる安価な映像が入り交じる群像の時代。「悪貨は良貨を駆逐する」ではないが、量で凌駕する安価な映像は、映像がコンテンツとしてしか存在し得なかった時代にできた映像文法を変化させるだろう。(165頁)
20世紀は映像の世紀であるとは先人の言葉。21世紀は群像の世紀である。(166頁) 
群像の時代 動きはじめたメディアコンテンツ群像の時代 動きはじめたメディアコンテンツ
志村 一隆

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2015年7月23日木曜日

読書『断片的なものの社会学』岸政彦著


昨日、二子玉川の蔦屋で購入した本を読了。
「社会学」とタイトルにありますが、内容は断想が連ねられたエッセイに近い。
この本は何も教えてくれない。ただ深く豊かに惑うだけだ。そしてずっと、黙ってそばにいてくれる。小石や犬のように。私はこの本を必要としている。(星野智幸)
と帯にあるように、この本では社会学的になにかを追求したり、実証的に証明したりするのではなく、”分析されざるものたち”を取り上げ、あったかもしれない未来を重ねながら、筆者の岸さんが優しい筆致で思いを馳せていく。

帯の裏側に書いてあった文章が全てを要約してくれているので引用。
どんな人でもいろいろな「語り」をその内側に持っていて、その平凡さや普通さ、その「何事もなさ」に触れるだけで、胸をかきむしられるような気持ちになる。梅田の繁華街ですれちがう厖大な数の人びとが、それぞれに「何事ものない、普通の」物語を生きている。
どこかの学生によって書かれた「昼飯なう」のような つぶやきにこそ、ほんとうの美しさがある。[...]小石も、ブログも、犬の死も、すぐに私の解釈や理解をすり抜けてしまう。それらはただそこにある。[...]社会学者としては失格かもしれないが、いつかそうした「分析できないもの」ばかり集めた本を書きたいと思っていた。
断片的なものの社会学

2015年7月19日日曜日

読書『なんで水には色がないの?』五百田達成著


面識もある著述家・五百田達成さんの『なんで水には色がないの?』を読みました。
まだ未読なのですが、『察しない男 説明しない女 男に通じる話し方 女に伝わる話し方』が大ヒットされていますよね。
最近では『スッキリ!!』のコメンテーターもされてて、大活躍ですね。

この本では東大教養学部というバックグラウンドを遺憾無く発揮し、文理問わない「どうして水には色がないのか?」「なぜ宇宙には空気がないのか?」「眠くなるのはどうしてか?」など子供が自然に疑問を持ってしまうようなこと、(大人は当たり前として疑問視すら忘れてしまっていること)をピックアップ、優しい語り口で紐解いてくれます。
中学生くらいなら普通に読める内容ですし、大人にとっても知的好奇心が刺激される良書かと思います。

2015年7月18日土曜日

読書『イニシエーション・ラブ』乾くるみ著


「最後の二行が衝撃」と言われ続けていたので、注意して読んでいたつもりなのですが...。
最後の解説文があるため、「まだ終わらんだろう...」と思っていたら...オワリ!
「え、え」と15秒間戸惑う...。Aサイド・Bサイドで読んだプロットを繋ぎ合わせる。
「うおー!そういうことか」というアハ体験にも似たスパーク。
10人いたら8人は途中では気づかないんじゃないか。
物の見事に練り上げられた構成。とくに時代背景の描写が秀逸ですね。
筆者の実体験なのか、そうではないとしたら恋愛に相当コンプレックスを抱いていて、周りの恋愛を相当集中して観察したとしか思えない。
映画も観たい!です。

2015年7月14日火曜日

読書『旅のラゴス』筒井康隆著


テンポよく疾走感のあるプロットが読んでいて気持ちよかった。
『百年の孤独』のストーリーラインの骨子を”旅”に置き換え、極限まで冗長な部分は排除して、あっさりとさせたような。
ショートショートが数珠繋ぎのように続いていくようなストーリーなので、読んでいても飽きがこない。
かといって人物描写にひねりもないので、SFなようでいて、心象風景は現代にもありふれた普遍的な人間同士のやりとりだったりする。

2015年7月13日月曜日

読書『10年後世界が壊れても、君が生き残るために今、身につけるべきこと』山口揚平著


大学院で同じ研究科の同期でもある、思想家・山口揚平さんの新著をサクッと読む。
普段からFacebookにポストしている慧眼溢れる断想を、ストーリーテリングでまとめ直したもの。
物語の流れ方はどことなく『ユダヤ人大富豪の教え』のようなところもありつつ、『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』などでも一貫して述べられているように、貨幣経済から信用経済という専門である貨幣論のダイナミックな移り変わりが近著でも重要なエッセンスに。
ユダヤ人大富豪の教え 幸せな金持ちになる17の秘訣 (だいわ文庫)ユダヤ人大富豪の教え 幸せな金持ちになる17の秘訣 (だいわ文庫)
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山口 揚平

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時代のキーワードが散りばめられつつ、いま世界でなにが起こっているのかの肌感覚がつかめるので、広い読者にオススメな一冊ですね。
10年後世界が壊れても、君が生き残るために今、身につけるべきこと 答えのない不安を自信に変える賢者の方法10年後世界が壊れても、君が生き残るために今、身につけるべきこと 答えのない不安を自信に変える賢者の方法
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2015年7月11日土曜日

読書『紋切型社会―言葉で固まる現代を解きほぐす』武田砂鉄著


「cakes」や「Yahoo!ニュース」で名前を目にすると、ついつい読んでしまうWEBでは数えるくらいくらいしかいない、ライター名で記事を読んでしまう書き手の処女作。

たとえば「SEKAI NO OWARIは「中2病」ではなく「高3病」」のようにトレンドとなっている時事ネタを痛快に読み解き、一刀両断に斬りまくるのが気持ちいい。
本著ではちょっと肩に力が入りすぎたのか、伝えたいことに対して、言葉が変に力みすぎてて、読みにくい部分も散見されたが、それでも読みの深さと比喩やライティングテクニックはさすがの一言。
勉強になります。
この本で試みていることはおそらく一つで、あとがきから引用。
決まりきった言葉が、風邪薬の箱に明記されている効能・効果のように、あちこちで使われすぎている。どこまでも自由であるべき言葉を紋切型で拘束する害毒を穿り出してみたかった。言葉は人の動きや思考を仕切り直すために存在するべきで、信頼よりも打破のために使われるべきだと思う。誰からともなく処方箋が示されている言葉に縛り付けられるのではなく、むしろ覆すために、紋切型の言葉をああだこうだ解体してみようと思った。
紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす
武田 砂鉄

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