Each day is a little life: every waking and rising a little birth, every fresh morning a little youth, every going to rest and sleep a little death. - Arthur Schopenhauer

2014年6月26日木曜日

2014 ブラジルW杯 日記


いよいよ待ちに待ったブラジルW杯が開幕しました。
全試合の番組表がまとまったものはコチラ。すぐさまハイライトなどを確認できる優良サイトがコチラ
ツイッターのつぶやきを随時、追加していきながら、ここに日記としてログを残しておきます。

①6/13 ブラジルvsクロアチア
「ルーズヴェルト・ゲーム」第7話をみ終え、W杯開幕戦ブラジルvsクロアチアまで待機。(2:46 - 2014年6月13日)
ブラジル開幕戦。前半まではライブで観ていたのだけれど、後半で寝落ち。保険で録画しておいたものをみる。結果はアレとして、クロアチアのチーム力が目立つ試合でした。チャンピオンズリーグ決勝のアトレチコみたいな。いずれにしても7月までは昼夜逆転生活が続きそうです。 (12:24 - 2014年6月13日)
Luka Modrić

モドリッチみてると、いつも往年のネドベド思い出す。(12:50 - 2014年6月13日)



開幕戦にふさわしい緊張感の張り詰めたナイスゲームでした。クロアチアのチーム力が目立ちましたね。試合をさばいた日本の審判団、とくに西村さんのPKの判定に非難が。
・(こちらも合わせて読みたい⇒)W杯開幕戦、西村主審は誤審をしたのか?“大会第1戦”の意味とクロアチア監督が批判した理由

②6/14 オランダvsスペイン
前半み終えたところで寝落ち。翌日録画で後半を確認。
前半終えて1-1で、シーソーゲームの様相を呈していたもののフタを開けると5-1でオランダの勝ち。
ロッペンの圧倒的ドリブルスピード、カシージャスの衰えを感じる試合でした。
カシージャスに関しては、チャンピオンズリーグのときから少し気になってました。
まあ、スペインは研究され尽くしたのかと。
チリvsオーストラリアも観ましたが、グループBはオランダ、チリが相当優勢かと。
コロンビアいきなり先制。ヴァイタルにかなり人数しっかりかけてくる。これは脅威だけど、裏返すとカウンターでチャンスは大きい。(1:10 - 2014年6月15日)
サッカーというスポーツは地域による相性が多分にある。ギリシャはヨーロッパ相手だと強いというか安定感があるけど、他地域だとそれほど盤石じゃないという印象。日本は南米をわりと得意にしてると思う。逆にオーストラリアとかアジアは苦手。いずれにしてもギリシャは2点目とられると、辛い。(1:13 - 2014年6月15日) 
イバルボのスプリントはかなり脅威だな。これで中央にファルカオがいたらと思うと寒気が...。(1:27 - 2014年6月15日) 
James Rodríguez
ハメス・ロドリゲスとエルナンデスがイメージ若干かぶる。 (1:38 - 2014年6月15日)
戦績をみても1-0で勝つ試合が多いギリシャだから、日本にとっては前半に1点とれれば相当なアドバンテージになり、勝利がグッと近づく。(1:40 - 2014年6月15日) 

ギリシャのミトログルが「24」のマイロにしか見えない。(2:30 - 2014年6月15日) 
個人的に高木琢也の解説は的確で好感がもてる。どうでもいいけど、楢崎はもうちょっと元気だしてほしい。暗すぎるw(2:37 - 2014年6月15日)
ギリシャはオフェンス陣に迫力・怖さがほとんど皆無に等しい。(2:49 - 2014年6月15日)
ハメス・ロドリゲス!今大会、役者がしっかり決めていってる印象。ネイマール、ドス・サントス、A・サンチェス、ペルシーなど。(2:52 - 2014年6月15日) 
コロンビアが強いというよりは、ギリシャが弱い。試合をみた率直な感想。堅牢な守備という良さが出せなかったギリシャは強みが完全に消されてた。(2:53 - 2014年6月15日) 
さて、イギリスvsイタリアまで仕事しますか。ウルグアイvsコスタリカはどうせウルグアイだと思うので。寝ないでパブリックビューイング直交になりそう。(2:55 - 2014年6月15日) 
やっぱり気になってしまったので、ウルグアイvsコスタリカ後半から観る。(5:01 - 2014年6月15日)
コスタリカ逆転!流れが変わった潮目を見逃さなかった。日本との練習試合のときにも目立っていた10番のブライアン・ルイスは圧倒的にキープ力があって、相手からファールをもらいやすい。間違いなくチームの中心選手で、前線のキャンベルとの関係がコスタリカの生命線といったところ。(5:18 - 2014年6月15日
これはスアレスを引きずりだす展開になりつつある...のか?(5:19 - 2014年6月15日
後半40分、コスタリカ3点目。これは決定打か。番狂わせ。(5:44 - 2014年6月15日) 
③6/15 コートジボワールvs日本
イタリアvsイングランドを見届け、コートジボワールvs日本をみるため豊洲マジックビーチで行われるパブリックビューイングへ。



前半、本田のゴール。パブリックビューイングならではの狂喜乱舞。
後半ドログバの投入で一気に潮目はコートジボワールへ。
こういうスターが出てきたときにも、マンUでプレーする香川、ACミランでプレーする本田など気持ちの部分で名前負けしない時代に突入していたのかと思いきや、まだ早かった。(参考:森重、ギリシャ戦に向けてメンタルの重要性を語る「戦術的なことよりも気持ちの部分が必要」
サッカーとは面白いスポーツで一人の存在でチームが一気に化ける。
コスタリカに1-3で敗れたウルグアイもスアレスがいないだけで沈黙。
ヤヤ・トゥーレが本調子ではなかったことを考えてもチャンスは十分あったはず。
そもそも親善試合ではコスタリカに1-3で勝利していたし、スペインに1-5で大勝したオランダにもドローだった。
もっとも大事な初戦を落とした今、データでみると相当厳しい状況に陥ったわけですが、前を向いていくしかないです。(参考:W杯日本代表は「予選敗退」のデータ予測を覆せるか
ボスニアに関してはかなり良いチームだということは分かっていたので善戦になることは予想していたものの、やっぱり試合を決めたのはメッシでした。
ぺぺやりましたね。ぺぺといえばサッカー界随一のワル。



ベルギーvsアルジェリアの前半をみ終えたところで就寝。にしてもヴィルモッツ老けたなあ。日韓戦のときにオーバーヘッドで点取られたのが鮮明に残ってるけども。(1:41 - 2014年6月18日)
一日の業務を終え、オランダvsオーストラリアを観戦。ケーヒルのゴールは今大会ベストゴール候補なのでは。ただ、彼が累積で次戦出場停止は痛い。ファン・ペルシーも同様に。(2:04 - 2014年6月19日)
Íker Casillas 

カシージャス...乙...。(11:02 - 2014年6月19日 )

③6/19 オランダvsオーストラリア 
凄まじい試合でした。点を入れたら入れかえす、見応えのある試合。
ケーヒルのダイレクトボレーは今大会ベストゴール候補でしょう。
ロッペン、ファン・ペルシーと二人で攻撃を組み立ててきたオランダにとって、ペルシー次戦、累積出場停止は痛い。まあ決勝リーグ当確なので、それほど大問題でもないと思いますが。スナイデルに関しては、相変わらずノーステップからのキック力が半端ないミドルシュートが健在で、初ゴールが待たれます。
現段階の僕の予想はドイツ、オランダ、ブラジル、フランス、メキシコの順でしょうか。
フランスに関してはリベリーが出られないことで、不安視されましたが、ベンゼマがノリにのっています。
ダークホース勢ではボスニア、クロアチア。
ボスニアはジェコをはじめ先発メンバーの大半がビッグクラブでプレー。
クロアチアはやはりマンジュキッチが加わったことでカメルーンに大勝。
さて、ギリシャ戦ですね。
コートジボワールvsコロンビア。いまのところどっちにどう転んでもおかしくない展開。こういうときにベンチに一瞬でムードを変えることのできるドログバが控えてるコートジボワールに分があるか?(1:26 - 2014年6月20日)
にしても上下グリーンのユニじゃナイジェリアにしか見えんな。(1:30 - 2014年6月20日)
コロンビアは攻撃に無駄がない。ナチュラルにオフェンス・スピードが速いから、日本はディフェンスの判断の一瞬の遅れに気を付ける必要がある。ハメス・ロドリゲスはまだ成熟しきっていない印象。ただ、トップにファルカオがいないのはかなり響いている様子。(1:33 - 2014年6月20日)
スアレスにしろマンジュキッチにしろ、一人がいないだけでチームはまったく別の生き物になるのがおもしろい。(1:33 - 2014年6月20日) 
マンジュキッチもスアレスも初戦を欠場し、出場した次戦で得点を上げる。これこそエース。 (参考:故障明けの絶対エースFWスアレスの2ゴールでウルグアイがイングランドを撃破!
これでコートジボワールが勝つとしたら、日本にとってはかなり厄介な展開になるということだよね。(2:10 - 2014年6月20日)
このキンテロの投入は、ドログバ予防策の先手なのか。(2:13 - 2014年6月20日)
ラムシ監督、日本戦とほぼ同じタイミングでドログバを投入。彼の存在感が磁力のようにほかの選手のギアを一段階あげたような。これぞスーパースター。なんか点入れそうやな...。(2:23 - 2014年6月20日)
そんなムードを若きエース、ロドリゲスが粉砕。(2:25 - 2014年6月20日) 
コートジボワール2失点目。コロンビアのアタッキングサードでボールを失ったら致命傷になるという好例。(2:31 - 2014年6月20日)
形勢が決まってくると、あとは得失点差が大事になってるということで、コロンビアにはあと1, 2点いれてもらいたい。(2:32 - 2014年6月20日)
コートジボワールの10番ジェルビーノ、ホッフェンハイム時代の宇佐美のスーパーゴールを思わせる得点で1点返す。(2:35 - 2014年6月20日) 
 
たぶん前回のワールドカップでも同じことを呟いていたと思うけど、ハワード・ウェブの笛は安定感しかない。(2:37 - 2014年6月20日) 
そういえば、こんなのありましたね。 
コートジボワールは右サイドからの組み立てが伝家の宝刀なのだな、やはり。(2:42 - 2014年6月20日) 
④6/20 日本vsギリシャ
今回はおとなしく自宅で観戦。
スタメンでの変更点は香川がベンチスタートで左に岡崎、右に大久保。ワントップは変わらず大迫スタート。明らかにザックはコンディション最優先ということでしょう。
この試合中まったくツイート等してないことを鑑みると、相当試合に入り込んでいたものと思われます。
コートジボワール戦とは打って変わって、わりと本来の日本のプレーはできていたのですが、結局スコアレスドロー。
打ちひしがれそうになりましたが、FacebookでGumi国光さんのこんなポストを発見。(その一方、こんな予言者の存在も...。)



統計的にはかなり厳しい状況ですが、コロンビア戦は再びパブリックビューイングで全力応援するつもりです。

コスタリカが躍進するたびに、親善試合で快勝した日本としては悔しさが募る。(12:15 - 2014年6月21日)

にしてもフランスは強いのう。(12:17 - 2014年6月21日)

そういえば、こんなニュースが飛び込んできました。⇒コートジボワール代表トゥーレ兄弟が離脱…弟が死去
作業を中断して、アルゼンチンvaイランをみる。まず目立つのはイランのシステマチックでアグレッシブなディフェンス。アジア予選でほとんど失点がないのも頷ける。世界屈指のオフェンス陣を擁するアルゼンチンがどこまで打ち崩せるのか。これぞ盾対矛の闘い。(1:11 - 2014年6月22日)
アルゼンチンvsイラン、後半半ばもすぎて、さながら日本vsギリシャの様相を呈してきた。(2:29 - 2014年6月22日)
これはメッシがマラドーナを超えた瞬間を目の当たりにしてるのだろうか...(2:50 - 2014年6月22日)

ドイツはガーナと2-2で引き分けですか。
これはゲッツェが言ってたことを裏書きしてるかなあ。(参考:ドイツ代表ゲッツェ、大勝のポルトガル戦は「過大評価されている」

残念ながら、ボスニアはナイジェリアに0-1で敗れてしまい、グループ・リーグ敗退が決まってしまいました。ミシモヴィッチやジェコなどタレントも多かったので、期待は大きかったのですが。
さきほどNHKで、サラエボ出身のオシムに密着したドキュメンタリーがやっており、僕も観ました。これに関し孫泰蔵さんがFBでまとめていたものをシェア。



ベルギーvsロシア@マラカナンを観戦。カペッロの采配が総合力で勝るベルギーとどこまでやれるのか。(1:03 - 2014年6月23日)
アザールはプレースタイルもチームでの地位も香川とほぼおなじ。(1:05 - 2014年6月23日)
前半終了。ファールの少ない非常にクリーンな試合という印象。ただ、球際は激しいし、両チームとも攻守の切替が速いから、どう転んでもおかしくない展開。後半は両指揮官のベンチワークで流れが一変しそう。(1:47 - 2014年6月23日)
 

ベルギーvsロシアはけっきょくアザールのお膳立てでベルギーが辛勝。
負傷者が出るなどカペッロは思い通りの采配ができなかったか...。
韓国はアルジェ相手に2-4で敗戦。(参考:韓国“史上最強”チームが衝撃の敗戦「海外か国内か」論争で窮地に立つ
アメリカは分かっていたことですが、やっぱり強い。ポルトガルと当たることで、指標になると思っていましたが、結果的にはドローですが、後半アディショナルタイムまで2-1でリード。大会を追うごとに強さが微増。
オランダvsチリをみたいのだけれど、いまだ終わっていない作業のブロックが二つ。これは後半からになりそう...。(0:32 - 2014年6月24日)
オランダvsチリは後半の終盤に試合が一気に動き2-0で蘭の勝利。ワールドカップならではのハイレベルな戦い。この結果を受けてチリは決勝リーグ初戦ブラジルと当たることが濃厚となったわけですが、簡単に敗れるチームでないことは確か。西は豪に3-0とさいごに矜恃を示した。(2:58 - 2014年6月24日) 
今大会をみているかぎりロッペンは本当にウイイレ状態。 
ブラジルは危なげなくカメルーンに4-1で勝利。
メキシコはクロアチアに3-1。スコアだけみると、ブラジルとまったくの同格。どこまで勝ち上がれるか。

⑤6/25 日本vsコロンビア
前半終了時点で1-1。
その分、膨らんだ期待も大きかった。
多くは言いません。全力を尽くした選手に拍手を送りましょう。
こんな長友の姿みて、批判なんかできるわけないです。


加えて、試合後のキャプテンのブログ
4年前の記事ですが、岡田元監督の記事「岡田武史氏が語る、日本代表監督の仕事とはがかなり響く。何度でも読み返したい。

後半はほとんど停滞してしまいました。申し訳ありません。

2014年6月23日月曜日

ワールドカップの裏で社会人野球「ルーズヴェルト・ゲーム」を粛々と


半沢直樹」が空前のブームを巻き起こし、同じ製作陣が同じ池井戸潤作品で、満を持してつくり出した次のドラマが社会人野球と企業再編を題材にした「ルーズヴェルト・ゲーム」。

巷はワールドカップ一色ですが、今作で描かれるのは青島製作所という潰れかけの中小メーカーの野球部が廃部寸前に追い込まれながらも、逆転に逆転を重ねていくというもの。
物語は野球部の話と会社の経営再建の話が同時進行していく。

そもそもタイトルにもなっているルーズヴェルト・ゲームの意味とは、
「点を取られたら取り返し、8対7で決着する試合」を意味し、野球を愛した第32代アメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトが1937年1月に、ニューヨーク・タイムズの記者に宛てた、野球記者協会から招待されたディナーを欠席することを詫びた手紙の末尾に記された「一番おもしろいゲームスコアは、8対7だ」という言葉に由来する。(Wikipediaより)
「やられたら、やりかえす」というのは「半沢直樹」から通底するテーマで、なにが違うかといえば、当事者たちの規模感というかプレイヤーの違い。
半沢では銀行間のバトルが描かれたわけですが、今作では大中小のメーカー間の争い。銀行も融資絡みで少し関係しますが。
そこに野球部というサブ要素が絡まり、メインのストーリーと交叉しながら、「逆転につぐ逆転」が描写されていく。

TBSのドラマ製作陣はおそらく演出の福澤克雄さんはじめ、キャストにかなりこだわっているのがうかがえます。
脇役ながら目立っていたマキタスポーツさんなど、存在感が強い役者陣のなかでぼくが個人的にツボだったのは監督の大道を演じた手塚とおるさん。



一見監督には相応しくないのではないという出で立ちながら、セイバーメトリクスのような統計データでチームの変革を成し遂げていく。
いわゆる熱血系監督とは違うという意味で、手塚さんが適役だったのが後から分かります。

あとは青島製作所の専務・笹井を演じた江口洋介さん。
生え抜きで社長候補の筆頭と言われながら、外部から来たコンサルタントの細川に社長の椅子を奪われ、内心に憤怒の念がちらつく。
水面下ではそりが合わず、腹心にクーデターをおかしそうな危うさを持っていそうなのだけれど、どこかで忠誠心というか、細川と同じベクトルを向いているという微妙な境遇をうまく演じられているように思えました。さすがです。

最後はぜんぜん関係ない動画でしめます。
奥さんの森高千里さんとギグしている貴重と思われる一幕。



【前回のドラマの話題】⇒木村拓哉主演『宮本武蔵』

ワールドカップという華やかな舞台の裏で、衰退が叫ばれている野球というスポーツの中の、さらに檜舞台からは遠い社会人野球。
なんとなく(関係ないですが)マクルーハンのこんな言葉を思い出しました。
(サッカーとは?)やがて野球の座を奪うスポーツ。無位置的、分散的、団体的で―つまり、電子時代の本質を備えているから。
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2014年6月4日水曜日

なぜわたしたちは夢を見続けるのか?―「技術決定論」の解体作業


今なら、ビッグデータやクラウド、少し前ならWeb2.0、「技術が社会を変える!」という言説は繰り返し再生産し続けてきた。
「システム社会」「ネットワーク社会」などその容器を入れ替えながらも、本筋ではほとんど変わらない。

技術決定論(technical determinisim)とは学術的にいえば「技術が社会構造や社会的相互行為、個人を規定する唯一の要因であると主張する学説」である。(参考:「技術決定論と文化決定論(technological determinism and cultural determinism)」)

いずれにしてもこういった技術決定論的な視座に立った「情報化社会論」は佐藤俊樹教授によれば、60年代から滔々と語られ続けてきたという。
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なぜ半世紀もの長きにわたり、このディスコースは生きながらえてきたのか。
それははじめから死んでいたからだと佐藤教授はいう。
その比喩として、ホラー映画の「生きている死体(living dead)」を挙げている。
つまり実質・中身をもたないこと。
なんでもないことは、なんでもあるということでもある。
これを佐藤教授はゼロ記号=空虚な記号signifiant zero)と呼ぶ。

そしてそれを可能たらしめている背後にある要因としては近代産業社会(主な制度として産業資本主義、民主主義にもとづく社会制御という政治制度がある)がある。
佐藤教授は技術決定論を批判的に捉え返す。
術の進歩と社会の変化を考えるとき、どのような技術がどう使われ・どう発展していくか―そこには社会の側の多くの諸力が重層的かつ複合的に作用している実例を数多く上げながら、「情報技術が社会の仕組みを変える」のではなく、むしろ、社会の仕組みの方が技術のあり方を決めているのではないかというものだ。

ソシオメディア論を研究している水越伸教授の見方も社会構成主義に近い。
「エレクトリック・メディアは情報技術の発達によって変化するだけではなく、国家や資本の編制力から、市民、あるいは大衆の想像力にいたる、複合的で重層的な社会の諸力の錯綜した結果として、今日のような姿に固定化させられてきた」
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たいして、技術決定論寄りの本としては東浩紀氏の『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』が挙げられるだろう。

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議論のまとめなどは2年前に読んだ時のもののリンク先を参照してもらうとして、自分なりの一般意志2.0の解釈だけ付記しておきたい。
すなわち、それはゾーエーのとらえ方に顕著に見られるのではないかということ。
罵詈雑言でわめき散らす人、極右過激派のような人、社会には色んな人であふれている。
こうした個人をミクロに眺めるのならば、たしかに彼らは剥き出しのゾーエーに見える。
ただし「一般意志2.0」が射程にするのは、よりマクロで総体的なもの。
これをテクノロジー、制度・システムの設計によって最適化できるのではないかというふうに理解している。

ただし、考えてみれば分かるように、純粋な技術決定論的とはほぼ想定不可能だと思われる。

たとえば、四川大地震を例に。
この大規模な地震が起きたとき、ソーシャルメディアを通じてこのニュースは中国国内にもすぐさま知れ渡った。
時間を置かずに、寄付や支援が次々と届いた。
アメリカと中国の間に海底ケーブルが繋がれていたことはたしかに、これを可能にする重要なファクターであったことは間違いない。
しかしながら、それを可能にしたのはアメリカに留学していた中国人(その逆も然り)や海外に駐在した中国人など、はじめに社会的な紐帯・絆が醸成されていたということも見逃せない。
技術のケーブルには、社会のケーブルが欠かせないのだ。

このように技術決定論と非技術決定論の中間にあるような議論をしている本として、クレイ・シャーキーの『みんな集まれ!ネットワークが世界を動かす』がある。
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その主張の核として以下を引用したい。
「革命は、社会が新しいテクノロジーを手にしただけでは起きない。社会がそれを新しい習慣とした時に起こるのである」
これは技術決定論的にとって核心的な批判だと思われる。
このような意味で本来、技術決定論的と対置されるべき対抗概念は存在しないのではないかと思う。
まっさきに浮かぶのが「社会決定論」という言葉であるが、技術と社会を同じレベルの変数として扱うのが極めて困難であるという点で(技術は独立へ、社会は従属変数)一応、これまでは社会構成主義や非技術決定論という語彙を用いた。
おそらく「強い技術決定論」や「弱い技術決定論」とするのが適当だと思われる。
たとえば政治哲学でもD・ミラーなどは「強いコスモポリタニズム」「弱いコスモポリタニズム」というような区別を行っている。
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こうした社会学やメディア論、押しなべて言えば社会科学で積み上げられてきた理論や論争、フレームワークを道具として使い、いかに現実をみることができるか。
たとえばこの「技術決定論」に関するプレゼンを共同でやった先輩も「「起業したからこそ学問の大切さに気付いた」”現役東大院生”前島恵さんの起業ストーリー」というインターンシップ記事の中で、技術決定論や進歩史観といったアカデミズムでさかんに語られた問題をじっさいの社会に見出しています。

それでいうと、先日、電車内でツイッターの創業記を読んでいるときに同じことを思ったのでした。
ツイッターを創り上げた彼らの信念の裏には技術決定論的な視座が少なからずあったと思うのです。
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【そういえばさっきこんなのありました】⇒2014年下半期にヒットしそうな5つのテクノロジー

孫さんが語るビジョン(「「300年後は平均寿命が200歳に」:【全文】ソフトバンク孫正義が予測する“テクノロジーの進化”」)。圧倒されます。技術決定論的な見方であることは間違いないにしても、とにかくワクワクしてくる。
だからわたしたちは夢を見続けるのかもしれません。

2014年6月3日火曜日

映画『凶悪』白石和彌監督作 13'


映画会社に勤める友人の勧めでiTunesでレンタル鑑賞。

上申書殺人事件」という実話に基づいた社会派サスペンス映画。
日本アカデミー賞最優秀作品賞ノミネートなど、かなり評価が高かった模様。
記者を演じた山田孝之、殺人を次々と犯した死刑囚を演じるピエール瀧、彼を裏で操っていた首謀者"先生"を演じたリリー・フランキー。
キャストが絶妙で、とくにリリー・フランキーのある意味いつもどおりのゆるく軽い感じが「凶悪」に拍車をかける。

「君と僕は足りないものを補い合う車輪のようなものなんだよ」と先生こと木村がやくざ幹部須藤に教唆し、「死体を金に変える」錬金術のごとく偽装保険金殺人を繰り返していく。
それと平行して徹底した証拠隠滅、関係者の口封じも怠らない狡猾さを見せる。
汚れ仕事を散々こなした須藤は結局、逮捕され、死刑判決が下る。

獄中で、自分が木村の掌に乗せられていたことを悟り、憤怒の念が次第に増していく。
とくに許せなかったのは唯一信頼していた舎弟の五十嵐を自らの手で銃殺してしまったことだった。
そこで闇に葬られようとしていた、木村と共謀した余罪を明潮社(実際には新潮社)の記者である藤井(モデルは宮本太一)にリークする。
藤井は会社の意向を無視し、単独で取材を重ね、裏づけを得ていく。

上告中だった須藤は自分の判決に不利をもたらすであろう余罪を吐いてまで、木村を制裁したかった。
劇中の後半では、キリスト教に入信し、習字や短歌などに生きがいを見出していく須藤が描かれる。

記者・藤井が事件にのめり込んでいく中で、池脇千鶴演じる妻の洋子は認知症の義母の介護にまいっていき、徐々に義母に暴力を加えることに罪悪感を覚えなくなっていく。

宗教に帰依してから人が変わった須藤。
温厚な性格が歪んでいき、追い詰められていった洋子。
木村や須藤に相応の償いを追わせようと、徹底的に、ある意味狂気に駆られ奔走する藤井。

環境や運命に翻弄されることで、変わっていく人間の姿、内側から顔を出す「凶悪」。
どことなく浦沢直樹『MONSTER』で描かれる人びとと交差する。

やはりフィクションよりも、実話の方が何倍も怖いものです。
ただエンターテイメント性でいったらやっぱり『アウトレイジ』ということになります。

【完全主観採点】★★★☆☆(3.5)
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