Each day is a little life: every waking and rising a little birth, every fresh morning a little youth, every going to rest and sleep a little death. - Arthur Schopenhauer

2013年5月1日水曜日

インド瞑想記② 悟性へと続く途

#①にひき続いて

独りで旅をするのは大学1年生の夏にアイスランドへ一ヶ月行ったときぶり。
それ以外の旅はいつも友達と連れ立っていた。

当たり前だけれど、時期もあり日本人の乗客は目に見えて少なかった。
ほとんどがインドの乗客。
3人がけのシートで、自分のみだったため、そのすべてを専有してゆったりと寝っ転がることすらできた。
いつも機内では隣の乗客と仲良くなることが多かったが、今回は睡眠を確保することになりそうだ。

航空会社はエア・インディア。とうぜん機内食はカレー。
前日、ほとんど睡眠をとっていなかったため、すぐに眠りに落ちる。
インドまではそれほど遠くなく、約8時間でつく。時差は3時間半。

トランジットでデリーに到着。
とりあえず一服へ。喫煙所が屋外に備え付けられており、外へ出ると茹だるような熱気が一気に体を包み込んだ。インドに着いたことを実感する。(インドは4、5月が夏にあたる)
外へ出る前に売店でライターを買おうと思い、尋ねると、"Outside(外だ)"と云う。
外で誰かに借りろ、ということなのかと思いきや


このような装置が備え付けられており、写真下部のボタンを10秒ほど長押しし、中央の凹みにタバコをつけると火が点く仕組になっている。ライターいらずというわけだ。
それで"Outside"か。なるほど。

ここでタバコを吸った時点で、箱に残ったのは3本。タバコとの別れが近づく。

ドルには前もって換金をしておいたが、手元にルピーはがなかったため、なるべく早く換金しておこうと思ったのだが、空港内に換金できるところがない。
インフォメーションで聞いても、「ない」という。そんなことあるはずないのだが。
とりあえずドルでマックに行く。マハラジャバーガーが気になった。


味は大してうまくなかった。
こういったファーストフードを口にすることも当分はおあずけになるということで、ポテトの一つ一つを大事に食べる。

カルカッタ行きの飛行機の中で、立花隆の『青春漂流』を読む。
青春とは、やがて来るべき「船出」に向けての準備がととのえられる「謎の空白時代」なのだ。そこにおいて最も大切なのは、何ものかを「求めようとする意志」である。それを欠く者は、「謎の空白時代」を無気力と怠惰のうちにすごし、その当然の帰結として「船出」の日も訪れてこない。彼を待っているのは、状況に流されていくだけの人生である。
終わりに記されたこの言葉は、正規のルートから外れ、インドへと今まさに瞑想の途にある自分の背中を押してくれているような気がした。 

2時間余でカルカッタに到着。この時点で23時。
たしか日本で列車の時間を確認したとき、23時半発だった。
急がなくてはならないのだが、荷物がなかなかコンベヤーに流れてこない。
そうこうしているうちに荷物を取り、プリペイドタクシーを予約した時には既に23時半を回っていた。
列車が遅れているという微かな望みを頼りにとりあえずタクシーでHOWRAHという駅へ向かうことに。

タクシーの運ちゃんはまったく英語が通じなかった。
"HOW / LONG / WILL / IT TAKE/ ?"と一音ずつ区切って、ゆっくり丁寧に言ったが通じなかった。とりあえず目的地だけは分かったいるようなので、もうそこで諦める。

カルカッタの街でまず最初に目についたのは野犬(stray dog)の多さ。
そこら中に徘徊している。横たわっているものは生きているのか、死んでいるのか分からない。死臭もただよっていることから、その内死んでいるものも転がっているのだろう。
タクシーが停車したとき、一頭の犬がにじり寄ってきた。
この時、狂犬病の予防接種をしなかったことを後悔しかけたが、杞憂だった。
犬は痩せ細り、眼にはほとんど生気が感じられない。


24時過ぎに駅に着く。
駅は人でごった返していた。日本に来る前にいくつかのブログでインドの駅周辺または構内で眠る人たちを写真ではみていたが、自分が実際に目の当たりにするとこれはもう凄い光景だ。
上の写真ではまだ、スペースが散見されるが、広い構内を所狭しと人々が横になっている。


早速チケットを買おうとするのだが、予想通りカウンターはもう閉まっている。
明日の朝まで待つとなると、確実に瞑想の集合時刻に間に合わない。
とりあえず、カスタマーセンターに駆け込む。
事情を説明すると、チケットを統括している責任者に掛けあってくれた。


事務所に入れてくれて、チケットを特別に手配してくれた上、食事までご馳走になった。
とても温良で親切な人だ。
結局、深夜2時の列車に乗り込むこととなった。

それまで、駅の中をぶらついたり、英語が流暢な駅員さんとお話したりして過ごした。


その中で一つ覚えているのが、「インドでは婚前交渉は固く禁じられているのだが、日本ではどうか?」と尋ねられたから「わりとルーズだよ」と答え、「むしろ厳しすぎるから、性の抑圧からレイプ事件が多発しているのではないか、それも一因なのではないか」と尋ねると、それは「違う」という。

広く知られているようにインドは男性優勢(male-dominating)な社会で女性は軽くみられている。それが一番、問題の根本にあるという。

日本のことに関して、矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。
彼に限らず、英語が堪能なインド人と話をはじめると例外なくみんな多くの質問を投げかけてきた。議論好きな国民というのはステレオタイプではなく、真にそうなのだ。少なくとも自分はそう感じた。

この時点で極度の疲労が溜まっていた。
電車がプラットフォームに滑り込んでくる、それに乗り込み、指定の席へ着くなりすぐに微睡んだ。

【瞑想記一覧】
■出発する直前
■インドへ到着
■いよいよ修行開始
■修行の後半戦
■最終日

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