Each day is a little life: every waking and rising a little birth, every fresh morning a little youth, every going to rest and sleep a little death. - Arthur Schopenhauer

2013年3月14日木曜日

読書『思索紀行―ぼくはこんな旅をしてきた』立花隆著


一章一章を味わいながら嘗め尽くすように、床につく前に、丁寧に読み進めて行きました。
「ニューヨーク研究」、「パレスチナ報告」など独立した章がそれぞれの土地で現地に赴いて見聞きした生の情報と数えきれないほどの資料から集めた情報を擦り合わせ、整合し、立花さん独自の視点を交えたルポルタージュ。
旅自体はかなり前に敢行されたものですが、だからこそ新鮮で躍動に満ちていました。
街の息遣いや、生物のようにその姿を変えていく都市、時代そのものが有為転変であることを再認識させられます。

第四章の「ヨーロッパ反核無銭旅行」は特に凄まじい。
日本人が海外旅行に行くこと自体、ほとんど皆無だった時代に、学生として世界を飛び回った氏。
その圧倒的なまでの行動力と、その裏にある緻密な行動計画。
現在の自分よりも年下だった当時の氏には感服です。
その旅を終えたときに、日記の最後に自ら記していたというメモにその怜悧な洞見が輝いています。
「人間の一生は、教育あるいは環境によって作り上げた偏見を壊すための止むことなき闘いである」
「旅の前と旅の後では、その人は同じ人ではありえない」という序章の言葉はずっと変わることなき氏の信念なのだと思います。 

この手の旅行記を読むと、とにかく旅に出たくなります。
この世界にはどれだけ、自分の知らない世界が広がっていて、そこで脈動を打ちながら、生活を営んでいる人々が確かにいること。

村上春樹氏の『雨天炎天』を読んで以来、ずっと心の片隅にあるギリシャ・アトス半島への興味は、より一層強くなりました。
あと、一章で描かれる立花さん自身による無人島体験も興味深かったし、いつか敢行してみたい。こういった試みに興味を持つようになったのは、去年マーク・ボイル氏の『ぼくはお金を使わずに生きることにした』を読み終えてから。


【立花隆さんの本】
・『宇宙からの帰還

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