Each day is a little life: every waking and rising a little birth, every fresh morning a little youth, every going to rest and sleep a little death. - Arthur Schopenhauer

2014年5月6日火曜日

読書『グーテンベルクの銀河系』M・マクルーハン著、『印刷革命』E・L・アイゼンステイン

グーテンベルクの銀河系―活字人間の形成印刷革命

「文化人間情報学基礎」という講義の課題図書としてマクルーハンの『グーテンベルクの銀河系』をそして、補完的に読むと理解が深まるということで、その後にE・L・アイゼンステインの『印刷革命』を読みました。

よく知られているようにマクルーハンはメディア論の始祖的なようにみられていて、技術決定論の嚆矢にもなったとみられる今著。
グーテンベルクの活版印刷術が発明され、人類は聴覚型から視覚型へと突入した。すると、①中央集権的、かつ②個人を基本的な単位とする"近代社会"が作り出された。
いわく、
五感のひとつが技術によって人間の外部に延長されるとき、その新技術が人間の精神の内部に内化されるのと同じ速度で、文化の新しい翻訳が発生する。
というように詩的な文体で、レトリックをふんだんにメディアの構造的変容が社会全体に多大な影響を及ぼし、人類の様態までもを変えてしまったという、まったく新しいフレームワークを与え、新たな学問領域を拓き、創発したという功績は認められるべきであるにしても、具体的な内実への言及は見られなかった。
これを宿題として、社会学は拡がりを見せていく。

『グーテンベルクの銀河系』を読み通して(レトリックやユニークなアナロジーに翻弄されながらも)肌感覚として、活版印刷登場以後、社会ひいては世界に地殻変動が全領域的に生起し、人類の型が変わったというのは分かった。
ただし、資料的な、分類学的な、そして書誌的な実証性を担保しながら、丹念に(文学性、詩的さを排除した形で)その変動の動態的プロセスが辿りたい。
だとすれば『印刷革命』はうってつけの本であり、著者も冒頭で述べているように、それ以前には(意外にも)そこを深堀りした先行研究はなかったという。
その意味で、マクルーハンにしろ、アイゼンステインにせよ、メディア論の枠組みに先鞭をつけてきたパイオニア中のパイオニアといえる。
そのぶん、研究は完全とはいえず、後発の研究を肉付けし、知識を補完する必要がある。

アイゼンスタインが『印刷革命』で行った作業で前提的な思想となっているのは、社会が変動するプロセスにはいくつもの変数があるが、その変数を辿った先にあるのが「印刷術」だということである。
印刷術を、複雑な因果関係を構成している数ある要素の一つにすぎないと考えることはできない。コミュニケーションの変容が因果関係そのものの性格を変えてしまったからである。印刷術が歴史的に特に重要なのは、印刷術によって、当時の一般的な継続と変化のパターンが根本的に変わってしまったためである
コミュニケーションの変容によって、ヨーロッパのキリスト教徒の、聖書や自然界に対する見方が変わった。神の言葉は多様性を帯び、神の業は一様不変となった。印刷機は字義にこだわる根本主義と近代科学双方の基礎を築いた。それは、依然として人文主義の学問には欠かせないものであり、今なお、われわれの壁なき博物館を支えている。 
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