Each day is a little life: every waking and rising a little birth, every fresh morning a little youth, every going to rest and sleep a little death. - Arthur Schopenhauer

2011年10月25日火曜日

読書『姜尚中の政治学入門』姜尚中著

Heal the World/ Michael Jackson



姜尚中さんの『政治学入門』という新書をサクッと電車の中で読みました。
東大の教授をなさっています。テレビで何度か見たことある人も多いと思います。


ぼくのゼミの先生の学生時代のゼミの先輩ということで、ゼミでも時々名前を耳にします。
カンさん自身が在日ということもあって、アイデンティティやナショナリズムに関する著作も多くて僕も何冊か拝読したことがあります。

今著も基本的には読みやすいのですが、「入門」という割にはやや語彙などが難しい印象でしたね。
純粋に政治学を一度も学んだことのない人にとってはやや難しいかもしれません。
ただ僕が好感を持ったのは、入門だからといって当たり障りなくニュートラルに政治を解説するのではなく、カンさんの明確な意見が打ち出されている点です。
それに加え、政治学の名著が数々引用されており、推薦図書として掲げられているので後学にも便宜を計ってくれています。

ぼくが共感した箇所を幾つか紹介したいと思います。
まずは現代世界でなお横溢する「暴力」について。
トロツキーの「すべての国家は暴力の上に基礎づけられている」という言説を前提に据えた上で、カンさんはこのような展望をみていらっしゃいます。
親密圏と公共圏の往来をさらに豊かなものとし、先述の共存・共生関係をベースとした公共空間がふたたび編成されたならば、暴力や権力の問題に対する新たな局面が見えてくるのかもしれません。
次に「主権」についてです。主権はウェストファリア条約に端を発するコンセプトで、長年国際政治の主要概念として捉えられてきましたが、高度にグローバリゼーションが進行した世界でほころび始めてきているのが現実です。ではどうすればいいのか。
今、なぜ「帝国」なのか、また、国連なのかと問われる背景には、国民国家に代わる主権をいかに再構想するのかという課題が、いよいよ先延ばしにできなくなった事態があるのでしょう。それこそが、現在を生きる私たちが直面する、数々の問題の本質なのです。

国民国家それぞれが「主権」を保持するだけでは、グローバリゼーション下における新しいタイプの種々の問題に対応できなくなってきているのです。
コスモポリタニズムに基礎づけられた、世界規模の「主権」の確立が急務ということでしょう。まあ簡単なことではありませんが。

また、政治学を勉強する際に、字面に沿って書籍をただ読むことに警鐘を鳴らしていらっしゃいます。もちろん多くの本を読み、知識を蓄えることは重要ですが、自分自身の視座を持ってして考察することが何よりの研究姿勢であるとおっしゃています。
歴史の時間の幅を広くし、そして過去との「類比」を行う「思考実験」を試みてみれば、眼前のシーン(この場合はイラク戦争の新しい局面)は、違った意味を帯びてくるのです。
今週の金曜日にカンさんが講演をなさってくれる予定のイベントに行く予定なので、もう一冊くらい著作を読みたいですね。
大学生ブログ選手権

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