Each day is a little life: every waking and rising a little birth, every fresh morning a little youth, every going to rest and sleep a little death. - Arthur Schopenhauer

2012年12月2日日曜日

無知のヴェールと禁煙について


近代政治哲学の巨匠ジョン・ロールズ。
当時、停滞していた正義論の領域でパラダイム・シフトを起こした1971年発表の『正義論』。

そこで呈示された「無知のヴェール(veil of ignorance)」という思考実験。

彼は社会契約説を範にとって正義の原理を導出していく。まず正義の根拠を、自由かつ合理的な人々が、彼が「原初状態」と名付けた状態におかれる際に合意するであろう諸原理に求めた。この原初状態とは、集団の中の構成員が彼の言う「無知のヴェール」に覆われた-すなわち自分と他者の能力や立場に関する知識は全く持っていない-状態である。このような状態で人は、他者に対する嫉妬や優越感を持つことなく合理的に選択するであろうと推測され、また誰しも同じ判断を下すことが期待される。そして人は、最悪の状態に陥ることを最大限回避しようとするはずであり、その結果次の二つの正義に関する原理が導き出されるとした。(Wikiより)

<第一原理> 
各人は基本的自由に対する平等の権利をもつべきである。その基本的自由は、他の人々の同様な自由と両立しうる限りにおいて、最大限広範囲にわたる自由でなければならない。
<第二原理>
社会的・経済的不平等は次の二条件を満たすものでなければならない。
①それらの不平等がもっとも不遇な立場にある人の利益を最大にすること。(格差原理)
公正な機会の均等という条件のもとで、すべての人に開かれている職務や地位に付随するものでしかないこと。(機会均等原理)

これはあくまで思考実験です。
つまり「無知のヴェール」を被っている状態をイメージすれば、現行蔓延っている種々の不正義は看過されるべきものではないし、奴隷も存在しえない。



ちょっと違う話にはなってしまうんですが、なんとなく「禁煙」のことを思いました。

ここ何ヶ月か禁煙をしようとあがいていて、色々思考の転換とかを試みていたんです。

そもそも、ランニングするときやサウナにいるとき。
最後、死力を尽くしたのスパートやサウナのあと1分等。自分の中でよく使う思考ハックとして、「あともう少し頑張れなければ、愛する人が死ぬ」や「無一文になる」とか
自分に仮想現実を植えつけて、最後の最後の努力の一絞りを引き出そうとします。
わりと上手くいきます。

ただ、タバコに関していうと、これでは通用しなかった。
精神では分かっていても、肉体の方は完全にニコチン、タールに侵食されていて、依存しているから。仮想の現実は仮想の現実の域をでなくて、簡単に現実を歪曲することはできない。

そういった「思考ハック」も「無知のヴェール」も頭で分かっても、実際に行動まで落とし込むことは難しい。
それはあくまでも思考の実験であって、現実の実験とは乖離してしまっているから。
「歴史のif」や「たられば」と次元は違えど、同じレベルであって、現実は現実でしかない。

ぐるぐるぐるぐる、そんなことを考えたりしてたわけです。

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